
チャンヌさんと対談したいなと思ったのは、デキルバのミーティングで、「それぞれの個性をもっと出してほしい」と言われたのがきっかけです。

チャンヌさんはASDとADHDの特性があって、お子さんも特性がある、スーパー当事者。間違いなくすごいアピールポイントだから、もっと発信したほうがいい!
と私は思ったけど、でも、チャンヌさんにしたら「え~そうかな~」。自分のことってよくわからないもんなんですよね。
だから、チャンヌさんの経験を聞いて、私が「へえ~!」と思ったことを伝えていけばいいんじゃないかなと思ったんです。

そう。それで対談の打ち合わせをしたんですけど「特性で困ってることを10コ教えて」と言われて挙げてったら、あっという間に20コ超えた(笑)
息子の診断がきっかけで「自分も?」

チャンヌさんは、自分が特性持ちだと気付いたのは、息子さんがきっかけなんですよね。

中3の長男と小3の次男がいるんですけど、長男が中1のときに「これはちょっと…」と思って、検査を受けたらADHDと診断がつきました。
それで、診断書を見てたら「あれ…これ私も当てはまるな…」という項目がたくさんあって…。

私はずっと、コミュニケーションの難が多くて、つらかったんですよ。パートナーとコミュニケーションがうまくいかないし、そのことで彼女も悩ませてる。
それはもしかして、特性が関係してるのかもしれない。「自分を知ることでトラブルが減ればいいな」と検査を受けてみたら、ADHAとグレーのASDという診断が出まして。

ASD症状について、当時は個人的な性格の問題と受け止めてたんで、質問されてもあまり言わず、グレー診断になったんですけど。
勉強していくうちに「これはASDだな」と確信し、今は自分でASDもありと名乗ってます。
弟妹も両親も特性持ち

チャンヌさんは、ご家族も特性があるんですよね。

私は3人きょうだいの長女で、3歳下の弟と10歳下の妹がいます。
妹は広範性発達障害と去年診断されてますね。弟は診断受けてないですけど、私から見ても、濃い目のASDだなと思います。二次障害がひどいパターン。

両親も特性ありです。診断は受けてないですけど、どう考えても母もADHDです。父もASD気質が強い。私はどっちももらっちゃった。

親もきょうだいも特性持ちという家族だと、自分の家のことは「ふつう」だと思う?

いやいや、私は母の特性がすごくイヤでした。学校への提出物などでミスが多すぎるんですよ。
親の特性でトラウマに…

チャンヌさん自身も忘れ物が多かったと聞いたけど、それとは別でお母さんも?

そう。今でも恨んでるのが、絵の具セット事件。
小学校では、絵の具セットのケースが、青とピンクの2色のどっちかにチェック入れて購入するので、私はピンクを頼んだんです。当時はまだ「男=青、女=ピンク」のイメージだったから。

それで、学校で出席番号順に一人ずつ渡される日に、名前の順で考えると、どうも自分の番で青が渡されそうなんですよ。
男子が全員受け取って、女子の番になると「あれ…女子の中に青いケースがあるぞ?」とみんなが気づいてざわつき始める。順番数えたら私。

「まさか…」と思ってたけど、青いケースを渡されて。「なんで!ピンクで頼んだはずなのに!」と恥ずかしくてショックで。
家に帰って母に言うと「えーごめんー。ピンクにしたはずなんだけどなあ」。対応が軽いんですよ!結局は、先生に事情を話して取り換えてもらったんですけど…

親御さんの特性のせいで嫌な思いをしたんですね

そう。他にも、ピアノ教室のお迎えの時間も間違える。5分10分じゃなくて、数時間来ない。間違い方がひどいんですよ。
お教室の先生が「かわいそうだから誰かチャンヌさんについてて」と話してて、そんな対応される自分がみじめでした。
だから、私は自分の子どもにそういう思いさせたくないと思ってるんです。

チャンヌさんのADHDレベルは、お母さんと比べてどう?

マシだとは思いますね。私は反省して対策を考えるから。

確かに、私が失敗することは絶対あるんです。気を付けても、気を付けきれないから。
でも、間違ったり迷惑かけたりしたら、子どもに対して全力で「本当にごめんなさい」と謝る。自分が親のミスで傷ついてトラウマになったから。

ASDって、反芻思考があるんですよ。過去のイヤなことを、毎日なにかしら思い出す。
「幼稚園でこんなんあったな、小学校でこんなこと言われた」とかが、突然脈絡なくパーン!と出てくるんですよ。

一見何もないように見えても、毎日なにかしら自分の中でトラブルが起きてるんです。突然ダメージがやってくるの、けっこうキツいんですよ。
でも、「今フラッシュバックで苦しんでるんです」なんて人に言えないでしょう。言われた人は意味が分からないし。
だから、自分の子どもの幼少期のストレスをできるだけ減らしてあげたいんです。

ああ、だから絵の具セットのことを細かく覚えてるのか。

そう。幼少期のことは、いやなことしか覚えていないんです。いいこともあったのかもしれないけれど。
だから、特性がある子どもには、嫌な思いをさせずにすむならそのほうがいい、と思ってます。
努力の「機能」はない

チャンヌさんは、勉強はどうでした?

小4くらいから算数の苦手感が強くなってきました。中学最初の数学が65点で、母に叱られましたよ。母は、チャンヌが勉強できると思ってたので。塾も小5から行かされてました。
でも、自分には努力の「機能」が備わってない。「嫌だけど頑張る」って機能がない。私なりには頑張ってるつもりだけど、それが「一般的な頑張り」ではないんですよね。乖離がある。

高校は英語科に進学したんですよね。

当時は高知県に住んでて、県立で唯一英語科がある高校が第一志望でした。
勉強はイヤだけど、英語だけは好きやった。英語を話したい気持ちが強くて、「英語科に行けば好きなだけ英語が話せる!」と夢を抱いて、受験は頑張ったんですよ。

ところが、入学したらイメージと違ってた。「成績がいいから英語科に来た」って人がほとんどで、英語を喋りたい人はほとんどいなかったんです。

同級生は「全部の教科ができて、その上で英語もできる優等生」が大多数で、「他はできないけど、英語だけはできる人」じゃなかったんですね。

そう。発音もカタカナ読みだし「喋りたいと思ってなさそうだな」と、入学して一週間でおかしいなと気づきました。
「私が高校に入った目的は、英語をしゃべることと、学校帰りにミスドに行くことなのに!」って。

なんですか、それ(笑)

高校は、勉強しにきたわけじゃないんですよ。放課後にお茶したかったの。
でも、高校っていろんな地域から通ってるでしょ。高知は広いし、少ない本数の電車やバスを乗り過ごすわけにいかないから、すぐ帰らないといけない人が多かった。自分は家から近かったので、寄り道しても平気なんだけど。
英会話しそうな人も、ミスド行ける人もいなくて、高校生活おもしろくなさそうやなと思ったんですよ。

周りは勉強してるけど、私は「人がやってるから、合わせて自分もやっとこう」という感覚はないんですよ。
「やりたくないからやらない!って空気乱すのはよくない」とは分かってるけど、「イヤなことでも我慢して頑張る」機能は備わってないからできない。

それで、高校の成績は低迷。英語も4か3。数学は授業が全く分からなくて、100点満点のテストで8点。
怒られましたよ。私が最初の子どもだから、親が希望を持ちすぎなんですよ。このあと、どうも違うなと分かっていくんだけど。

進路のことはどう考えてた?

私以外はみんな頭のいい人の学校なんで、入学直後から大学受験の話ばっかりでしたよ。それで、私もなんとなく「外国語大学に行くか~」と思ってました。

でも、大学行ったらバンドやると決めてたんですよ。音楽やるのがずーっと夢だったので。
高3のとき、ひょんな出会いがあってバンド組んじゃった。学校つまらないから仲良くしてた、他校の子なんですけど。

高3でバンド始めちゃダメでしょ!!

チャンヌはそういうのは通用しないんで!笑
バンドに一生懸命になったので「大学行かんでいい」って思いました。特性ゆえの白黒思考ですよね。

学校の先生は「大学行きながらバンドすればええ。サザンも青学やぞ。大学に行きたいという気持ちがなくても、とりあえず行っておくといい」と説得するんだけど「いらんわ、意味ないし」。
先生は親にも「どうせ言うこと聞かないから無理。あきらめてください」

それで、高卒後はバイトしながらバンドやってたんやけど、数年して「どうもプロにはなれん」と薄々気づいたんです。
そんなときに、家族で大阪に引っ越すことになって。大阪で何の仕事しよかなとなったときに、高知いたときに聞いた占いを思い出したんですよ。

「あなたは先生が向いている。なんでもいから人より得意なことをやりなさい」と。
「人より得意なこと…ほな英語か。英語しかないな」で、子ども英会話講師養成講座に行ったんです。そしたら、楽しいの。外国人講師がいる英語教室で働き出したら、めっちゃおもろい。

占いが当たってたんだ!

そうそう。そこの大手に4~5年いて、そのあと一人でやるようになって、トータルすると20年英語講師やってることになりますね。
言われたことを額面通り受け取って、すれちがい

ところで、チャンヌさんはASDとADHDの両方の特性があるってことで、具体的にどんな困りごとがある?

相手の意図がつかめないですね。言葉を額面通り受け取っちゃう。一般的に「Aという言い方してても、実は意味はB」ということが多いでしょ。
例えば、パートナーのるいさんと家で食事をしているときに、「これ、おいしいね」と言われて、私は「ありがとう」とだけ返した。

でも、るいさんとしては「おいしい(からもっと食べたい)」という意図で、「もうちょっと食べる?」「おかわりあるよ」というような返事を期待してたらしいんですね。
私はそれでは分からない。あくまで感想にしか思えないから、欲しいなら欲しいと言ってほしい

あ~私がオットに「これ、おいしい」って言われたら「まだあるよ」って言うな~

マジか!本当にそれで通じるんだ!びっくりだ。
そんな意図は汲み取れない。いや~、チャンヌは新しい世界を知りました笑

じゃあ、「寒いね」と言われたら、それもただの感想だと思う?「暖房つけようか」とは思わない?

うん、感想でしかない。「暖房つけて」と言われないと、暖房のことだとは思わない。
その人が今にもこごえそうな様子で、目で見て分かるなら「暖房つけよか?」と思うかもしれないけれど。

ええー。そうなんだ!

だから、定型の人からからすると、私って冷たい人、思いやりがない人と思われがちなんですよ。
私は「感想を言われただけ、それに自分が動かないってことは、思いやり云々ではない」と思ってるけど、世間の人はそう思わない。

私からすると、「みんな、おせっかいなんだな」って思う。あ、これはいい意味ですよ。私にとってのおせっかいをすることが、世間の親切や優しさなんだと思うんです。

こないだ読んだコミュニケーション論の本に載ってたんですけど、日本は「言わなくても察する、阿吽の呼吸」をよしとしますよね、そういうのを「ハイ・コンテクスト文化」というんですよ。
一方で、全部なんでも言葉で説明しないと気が済まないのが「ロー・コンテクスト文化」。アメリカとか。

日本型のハイ・コンテクスト文化では、話し手の意図が受け手に正しく伝わらなかった場合、「察せなかった受け手の問題」になる。
ところが、ロー・コンテクスト文化では「言葉を尽くさなかった話し手が悪い」となる。

だから、チャンヌさんがアメリカみたいなロー・コンテクスト文化に暮らしてたら、もしかしたら今ほど苦労しなかったかも…と今思いました。
チャンヌさんは異世界に住んでるようなものかもしれない。
「自由」ってどういうこと?

「言葉の裏が分からない問題」で最近あったのが、長男の高校見学。「服装は自由です」とあるんだけど、これがわからん。「自由」って何?って頭抱えた。

「高校見学で服装自由」って「制服を着なくていいですよ」ってことでしょ?

うん、そうなのかなとちょっとは思うんやけど。
「自由」だったら、例えば、「水着でもいいのか」「中山きんにくんみたいな恰好でもいいのか」とか。

それはないでしょう笑

これ、おちょくってるわけじゃなくて、本気でそういうこと考えるんですよ。
でも、私の解釈の間違いで、息子に辛い思いさせたくないって思うんですよ。それで、Twitter(X)で「説明会で服装自由ってなんだろう」と聞いたんよ。そしたら「これは制服じゃなくていいって意味ですよ」とコメントもらって。
「そうなの?じゃあ、そう書いてよ!」って思う。

分からなかったら人に聞くという知恵を得た!(笑)

そう。それで、私服OKだというのは分かった。
しかし「チノパンはいいのか、ジーパンはどうか、穴が開いてるダメージデニムでもいいのか」と考えちゃう。

さすがに、穴は開いてないほうがいいんじゃないかな。説明会だから。

その基準がわからない!
だから、長男に「説明会は服装自由で、自由というのは制服でなくてもいいってことらしいねんけど、どうする?」と聞いたら、長男は「てきとうでええんちゃう?そこらへん出かけるくらいの服で行くわ」と。

長男くんは、そこ気にならないんだ(笑)

そう!で、実際行ってみたら、制服の子もいるし、私服の子もいるし、ジャージの子もいて、「ほんまに自由ねんな」と思った。
でも、あんまりカジュアルすぎる子はいなくて、やっぱり線引きがわからないって思った。「制服でもいい、ジャージでもいい、スニーカーでもいい」とか、全部書いてほしい

「サンバのカーニバルはダメです」とか笑

そう!保育園の入園式のときも同じようなのがあった。「入園式って皆さん何着てくるんですか?」と保育士さんに聞いたら「皆さん、普通のかんじで来られますよ」。
「そうか、普通かあ」と思って、ほんまに普段着で行ったら、みんなセレモニースーツなのよ。普通って言ったやん!

笑。それは、セレモニーの「普通」なのよ。

もうね、「自由」という言葉に過度に反応してしまうんですよ。私の思う「自由」と世間の「自由」が違う。どうすればいいか、全部教えてほしい。
世間は無意識にあいまいな言い方をしている

他にも、「トイレ行くから、代わりに荷物見てて」と言われた場合に、チャンヌは本当にじっと見てるの。
「荷物見てて」という依頼は「盗難にあわないように気を付けてほしい」ということで、じーっと眺め続ける必要はない。でも、それを額面通り受け止めて、アリの観察かのように見続ける。

言葉の裏を読まなきゃいけないっていうのは、日本人独特かもね。
日本人は遅刻すると「遅れました」って言うけど、それが「ごめんなさい」の意味なのね。遅刻したという状況を説明することが、謝罪の表明になってる。英語話者の人には違和感らしい。

あー!それもある!メールで「返信遅くなりました」とあると「それなんで言うんやろ?」ってずっと気になってた。「遅くなって申し訳ないです」の意味が省略されてるのか。

本当に全部全部言わないと伝わらないのか。チャンヌさんアメリカ行ったら住みやすいのかも。

そういえば、塾でも生徒が「先生できました」って言うのも同じだ。「できたから、チェックしてください、見てください」って意図なんだけど、それを言わない。「できた」という状況報告が、相手に対する依頼になっちゃってる。
相手にしてほしいことを直接言わない文化が、子どもにも染みついてる。

この社会は「周りが気付いて、動いてあげるのが美しいこと」とされてるんですよ。それはこの数年で気付いたし、できるだけやろうとはしてます。チャンヌのできる範囲でだけど。

「言われる前にやるのが善」というのはあるよね。

みんな、「言葉の裏を読め」って意識はないまま喋っている。話し手はナチュラルに言って、聞き手はナチュラルに察することが求められる。「おいしい」は「おかわりのサイン」とか。
だから、「ありがとう」と返すだけだと、「なんでそんな思いやりがないんだ」「なんでわかってくれないんだ」と不満を持たれる。

そんなだから、るいさんは「チャンヌも、意図があって『もっと食べる?』と言わないのかも」と思ってたって。「余りはあるけど、明日のお弁当に使うから今出せないのかな」とか。
そのうち「チャンヌは本当に言わないと分からないんだ」と気づいて、「察して」はしないようになってきた。

察しあう文化で生きてきた人には、意見や要求を直接言うのに抵抗があるかも。「~するといいんじゃない?」とか、ちょっとぼかす。

疑問文で言ってることが、必ずしも疑問を表しているわけじゃない。
よくあるのが、親が子に「なんで宿題やってないの」と言うやつ。「Youtube観てたから」と返すと怒られる。この場合の「なんでなの?」は、理由を聞きたいわけじゃなくて、自分の不満を表すのが意図なんだよね。

いや~。「なんで?」の疑問文が「私は怒ってます」を表すって、チャンヌには異文化すぎる!
「お腹すいた」と「食べたい」はイコールじゃない

そうだ、他にもあった。私が「お腹すいた」って言うときは、純粋に「お腹すいた状態である」という報告なんですよ。

えっ?「お腹すいた」は「なにか食べたい」ってことでしょう?

あー、やっぱり世間と違うのか。お腹すいてる状態だから、そりゃあ、突き詰めて厳密に考えたら食べたいのはあるけど、私は「お腹すいた」に「何か食べたい」って意図は込めてないんですよ。

「寒い」と一緒で「お知らせ」なのか~。そこに要求はない。

そうそう、るいさんが戸惑ってたことがあったんやけど。私たちが食べてるところに長男がやってきて「それ、おいしそう」って言ったの。
るいさんは「あげなあかんかな」と思ったけど、チャンヌは「めっちゃええやろ、おいしいで」それで終わる。「今度買ってみ」と言うけど、あげへん。

そこであげないんだ!私は「お腹すいた」と言われたら、「何か食べたい」もしくは「特定の何かが食べたい」だと思う。

えっ、「お腹すいた」何が食べたいかまで分かっちゃうの?

うん、時と場合によってはね。
こないだオットと車に乗ってた時、オットが窓開けたの。「ああ、換気したいんだな。私も開けてあげよう。両側の窓が開いたほうが換気しやすいもんね」と思って、少し窓開けた。

ええ~。チャンヌは「なんで開けたんやろ」って思うだけ。

やっぱりそうなるのか笑
どうふるまえば正解なのか分からない毎日

ここ数年で、「世の中でのふるまいは、(チャンヌの思うところの)おせっかいになればいい」と気付いたんですよ。「いらんかもしれんけど、やっとこ」って。向こうの要求基準には届いてないかもしれないけど。
でも、それでダメと言われたことはないんで、まあまあうまくいってるはずです。

「察する」という言葉に「おせっかい」ってフリガナがついてるようなもんなのね。

そうそう。ただ、「おせっかい」って世間ではよくない意味の言葉だから、言わんほうがいいわけでしょ。
そういう、自分なりに世間様に合わせる判断がものすごくたくさんあって、だったら「もう、何も喋らないでおこう」って思う。何が悪いかわからないですもん。

じゃあ、「寒いね」って言われたときに、「え~、私はそうでもないけど」と言うこともある?

ある。言っちゃう。でも、それは相手の思いや感覚を否定してるつもりではないの。
ただ、最近は世の中が分かってきたから言わないようにしてる。「チャンヌはそう思ってないねんけど、今は寒いって言ったほうがええんやろうな」と思って「寒いね」って返す。

そんで、こうやって気を使って言っても、それが望ましい応答なのかは分かんない。チャンヌがこうだろうなと思って言ったら違った、ってことがあると「ああ、もうだめだこりゃ」。
もうね、答えのない世界なんですよ。チャンヌには文字が全てなのに、見えないものを当てなきゃいけない、毎日がハードモード。

毎日疲れるわけですね~

仲いい友達はみんな私と同じタイプなんで「おいしいって、おかわりの意味らしいで」と言うと、「ええー、それはないわ」って言うんだけど笑
でも、世界を見てみると「おいしい=おかわり」のほうが多いから驚き。
それでも、チャンヌは「お腹すいた…って言ってるだけかもしれない」と思う。状況の説明が、その人のしたいことを表してるって認識はない。
みんなが好きな遊びも楽しくない理由

私の思考が少ないんですよ。その一方で、余計なことを考える。小学校でみんなが楽しむことも、チャンヌは考えすぎちゃうから楽しくないの。
例えば、ドッヂボールがイヤ。普段は「人にものをぶつけるのはよくない」って言われてるのに、それが「ドッヂボール」となったら「ぶつけましょう」になっちゃうでしょう。

他にも「人に親切にするのがいいことですよ」と言われてるのに、椅子取りゲームでは血眼になって人を押し出す。
ハンカチ落としは「気付かないようにしてやろうぜ、しめしめ」「こいつ気付いてないな、アホやな」って悪意があるし、そもそも、ハンカチは床に落とすものじゃないでしょって思う。

えー!そんなん言ったら、学校のレクは全然楽しくないじゃないですか。もしかして、トランプも苦手?

うん。ババ抜きって、最後どういう気持ちになったらいいのか分からん。

気持ち…?例えば、チャンヌさんが残り2枚(ババと、そうじゃないカードを)持ってたとして。相手がババじゃないカード取って「あがり」になったらどう思うの?「負けた、悔しい」ではないってこと?

なんだろう。なんか、「自分が勝って人を傷つけなくて済んだ」とホッとする一方で、「ババが残る人の気持ちってどうなんだろう」って考えちゃう。
勝ち負けがあるとダメ。自分が勝ちたいわけじゃないけど、負けた人のことが気になっちゃう。

へえ。じゃあ、桃鉄(桃太郎鉄道)もダメ?

あれは絶対に勘弁して!貧乏神のなすりつけが私にはできない。みんなから、おもしろくないって言われるけど、人を傷つけたくないから無理。
「ゲームだからいい」という理屈は私にはない。だって、実生活で他人にウンコなすりつける奴いたら、やばいやん?

ちょっと待って笑 そんな風に考えちゃうんだ笑
冗談が通じずにキレる次男

私は区別がつかないけれど、次男も冗談が通じない。あるとき彼が学校で「トイレ行くわ」と言ったら「じゃあ、教室からお尻出して行ってくださーい」とクラスメイトがからかった、ということがあって。小学2年生のくだらないギャグよ?
でも、次男はブチ切れ。「プライベートゾーンを教室で出せっていうのか!プライベートゾーンは人前で見せたらあかんし、見せろというのもあかんやろ!」

すごい。性教育が行き届いている(笑)

次男が言ってることは間違ってないんだけど、そこはそういうのとは違うやん。でも「見せろって言うのはあかんやろ」って怒りで手が出ちゃったんよ。
次男は冗談が通じないし、私は「ゲームだから」が通じない。

だから、一般的な遊びは何やっても楽しくない。小学校は苦痛やった。
例えば、トランプの神経衰弱は、2枚めくって合わなかったときの空気がイヤやった。フルーツバスケットは「のけ者を作って遊ぼう、とろい奴は誰だ」って悪意を感じる。

それじゃ、おたのしみ会じゃなくて、おくるしみ会だ。
子どもの違和感・苦しみに寄り添いたい

特性ある子全員ではないけど、チャンヌは子どもの違和感に共感しやすいと思うんですよ。大多数の大人が「え?そんな?大したことないやろ?」と捉えることの、背景がちょっと分かる。

大人が「あれイヤ、これイヤと、いつもわがまま」と思うのは、子どもがうまく言語化できないから。
チャンヌは親も自分も子供も特性ありで、子の立場、親の立場、自分自身の3つの視点がある。それって稀有なことやろうから、発達障害の苦しみってこういうことですよと、言語化することを自分のライフワークにしたい。

そうだよね。こうやって聞いてても、特性についての一般的な本を読むのとは全然違うもん。

発達障害の本では「忘れ物しますよ、空気読まないですよ」とか特徴が箇条書きになってて「じゃあこうしましょう」の対策で終わるだけ。
「なぜそうなるのか」の感覚を伝えたい。

「イヤ」の根っこが分かったら、不登校の子に「おたのしみ会だけおいで~」と言えないよね。

そう。そんだったら、授業のほうがええもん。勝ち負けないから。

私は特性当事者だけど、それでも子どもに「なんでできへんのやろ」と思う瞬間はどうしてもある。次男に対しても「あんたの人生は、そんな怒ることばっかりなんか!」と。彼は人より妙に考えすぎてて、怒りを感じやすいんよね。
「この子、たぶんこういう風に思ったんやろな」っていう思考回路が分かれば、親も楽になれるでしょう。

(スペースのコメント欄を見て)「言葉の裏を読む大変さは分かる。例えば、国語辞典では1つめ2つめに出てくる意味が主に使われるけど、意味の5つめくらいで出てくる『転じて~を表す』のようなもの」だって。

ああ~!それいい!「『これ、おいしいね』は、転じて『おかわり』という意味である」と考えればいいのか!
「文字の意味と違うやん、それじゃわからんわ」と思ってた。そうか、辞書の5番目の意味を読んでると思えばいいのか。

したら「納得いかない!」とかないもんな。「そういう使い方もあるのか」って思えばいいし、子どもたちにもそう言える。
大阪だと「お前アホか」は、侮辱やなくて「おもろいやっちゃなあ」というコミュニケーションなのに、次男は分からんのですわ。「それは、転じてってことやで」と言ってみたら違うかもしれん。

早速やってみて!そして次回報告!

やる。次男、こないだは「苗字をもじってからかわれた」と怒ってたんだけど、それは「苗字をバカにするのは、自分だけじゃなくて家族をバカにしてることになるから許せない」って。
妙な正義感が強い。察せない割に、敏感なところがある。察せなくて鈍感なら「鈍いんだな」で済むんやけど、なんかバランスが違う。理解してもらえなくて孤独なの。
「君はこういう感覚で、こういところに納得いかないんよね」と分かってあげたい。子どもが救われるから。

いや~、本当に勉強になりますよ。

そしたら、チャンヌも生きててよかったって思える。今までの苦しみが、苦しみだけで終わらず、意味があったってことだから。チャンヌの経験をもっともっと言語化して、社会の役に立っていきたい。

ぜひそうしましょ!この対談、3回くらいのつもりだったけど、たぶんそれじゃ終わらないね(笑)

既に、話したいテーマがもう思い浮かんで!笑
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